「お揃いなんか、しなきゃよかった。」


ええ、――?

そんなにテンション、落ちんの??


唇を尖らせた玲は、俺の腕を振りほどき、さっさと前を歩きだす。


ったく、――――。

聞いて落ちるなら聞くなって…、ねえ?


「れーい、玲ちゃーん。」


後ろから声をかけると、澄ました顔で振り返る玲。


怒ってる、怒ってる。


俺は横に並ぶと、逃げないように腕を掴み直した。


「中学の時かな、海外試合に行く時、その時の彼女とお揃いのジャージにしただろ。

それから、携帯のストラップもお揃いにされたなあ。

高校生の時は、スニーカーとか…。

色違いのリュックとかね。

あー、あった、あった。

遠距離の子とは、―――。」


「あー!!もう、いいですっ!翼の馬鹿っ!!」


「だって、俺の周り、女の子ばっかだよ?

男子率、低いスポーツだしさ。

そういうの、普通だったから何とも思わなかった。」


―――――。


「…はしゃいじゃって、馬鹿みたい…。」


がっくりと意気消沈した玲は、大きな溜め息を吐く。


あーあ。

拗ねちゃって、可愛いんだからもう。


俺は玲の頭に手を乗せ、ぽんぽんと叩く。

これは玲が好きな、俺の仕草ランキングのベスト3に入るらしい。

いろんなところで使わせてもらってるけれど、かなり効果があるんだよね。

小さな喧嘩は、だいたいこれで解決できるから、不思議。