「あはは。玲の顔、おもしれえ。」


綾子との買い物で、両手に大きな紙袋を3つも下げていた私は逃げられず、為されるがまま。


「ほら、そっちの荷物も貸して。」


両手が空いた私は翼の腕に絡まって、見上げる。


「何、―――?

そんなへらへらした顔をして。」


翼がね、思うよりずっと、私は翼が好きなの。


「別にー。」


「この荷物、一回、家に置いてくるか。」


「うん。」


手を繋いで、帰ろう。

そして、家に帰ったら、髪も巻き直そう。

お化粧もきちんとして、新しく買ったワンピースに着替えて、少し高めのヒールを履こう。

それから、デートしようね、翼。

喜んで、くれるかな。


「髪、切って正解だった。」


似合うねって言ってくれたのが、嬉しくて。


「電話、あったよ。綾子さんから。」


「え?」


「玲の髪、切っちゃいますけど、長いのが好き、とかありますかって。」


「ええーっ!!」


綾ちゃん、いつのまに…?


「えっ、えっ、じゃあ、翼は何て答えたの?」


「玲なら何でもいいって。」


思わず、ぶはっと、むせてしまった。


「いいんだよ、玲は何だって。

玲は俺のことを考えて行動するから。

きっと、可愛くなってるだろうなって思ったから。」


「…っ。」


その言葉の重さに、改めて反省した。

私を一番に考えてくれる翼と、翼に甘えていただけの、私。

大きな愛で包んでくれる翼を蔑ろにしたのは、私。

もう二度と、こんな失敗はしない。


気付かせてくれた綾子に、感謝して…。