「まだ引きずってるって、思われたくないんでしょ?」


「…うん。」


私は溜め息を吐きながら、コーヒーを口にする。


「言えばいいじゃん、――――。

前の男、思い出すからって。

そしたらもう二度と、言わなくなるだろ。」


紺ちゃん…。

それは、そうなんですけど…。


私はふてくされたような顔をして、紺ちゃんを見つめた。


「言えたら、いいよねえ。

あの頃の写真見たら、可愛い可愛いお人形さんみたいな玲ちゃんだもん。

その隣には、常に渡瀬さんが並んでてさー。

上原さんの知ってる、強い玲じゃないもんね。」


「ううっ…。」


強く見えちゃうのかな…。

髪だって、一つに纏めてしまうことが多い。

職種が職種だからって、お化粧もブラウン系の強い感じだし。

でもまあこれは、男性が多い中で、女性だからって舐められないように気合い入れているだけなんだけどね…。


「でも、上原さんもさすがに俺様っていうか…。

絶対ピンク!!って、ところが可笑しいけどね。」


「うーん。

絶対、譲らないんだな、これが。」


「俺が言った通りにすれば良いって、普通、なかなか言えないぜ?

俺、綾子にそんなこと言ったら、殴られそう…。」


「そうっ。そこなんだよっ!!」


憤った私は、身を乗り出して説明する。