ガタンッ、―――――!!




蹴り上げられた椅子が、壁に激突する。

その大きな衝撃に、私の心臓は縮み上がった。



「…ひ…っ。」



あの穏やかな航太が…、ここまで…。



「……っ!!」



ここまで怒らせたのは、私だ。



これで、いい。


とことん嫌われるように、仕向けたんだもん。


二度と思い出したくない。



そう思われたら、本望、―――。



航太が玲の元へ帰れるのならば、……。


これくらいどうってこと、ないよ。


これで堂々と、玲を迎えに行けるよね?



「航太。」



背中を向けて、ドアへと歩き出す航太に声をかけた。


もう、振り返ってもくれないんだね。

だけど、最後に言いたいの。



「航太。ありがとう。」



ごめんね、航太…。

苦しませて、悲しませて、辛い思いをさせた。

こんなのちっとも恋愛じゃないよね。



あの日、――――。


「待たせてしまって、ごめんね。」


そう言って、初めて私に触れてくれたよね。


私、すっごい、幸せだったよ。

絶対に、私が航太を幸せにしてあげる。

そう、心に決めたんだ…。



好きよ、航太、―――。



あなたがいなくなったら、本当にどうしていいのか…、わからない。


でもね、これでもね、私、玲から学んだの。


自分が犠牲となっても、大切な人を守りたい…。





さようなら、航太。





これで、本当にさようなら。






愛してる、……。