「遅くなって、ごめん。」


「…航太…。」


麻友理…、泣いてたのか…?


少し赤い瞳を確認して、目を伏せた。


正直、重い、――――。


玲との話を、聞いてしまったからか…?



廊下の外にまで漏れていた、麻友理の声。

その後に続く声で、玲が面会に来ているんだと悟った。


「…っ、玲の馬鹿っ!

玲のこと、…っ、

嫌いに、慣れたら…

良かったのにっ。」


―――――――!!


立ち聞きするつもりなんか、なかった。

麻友理の、張り裂けるような声に、動けなくなってしまったんだ。


「ずっと、玲の笑顔が、消えなかった…っ。

だんだん、怖くなったの…。

私は、どんなに頑張っても、玲には勝てないっ。

どんどん、自分が、酷いことしてるって、

意識が無くなっちゃって…。


ごめんなさいっ。


ごめんなさい、玲っ。」


「……っ。」


今さら、謝られたって、…遅いんだよ。

もう、どうにもなんないんだよ。

どうしようも出来ないところまで、きちゃったんだよ…。


俺は唇を噛みしめて、その場を離れたんだ。


「体調、どう?」


穏やかに努めようと、心掛けた。

麻友理はゆっくりと、起き上がる。


「起きて平気なの? 寝てて、いいんだよ。」


「…大丈夫だから。」


「そっか。面会時間過ぎちゃったから、そんなにいれないんだけど。」


俺は麻友理の視線に合わせて、首を傾げる。