すっかり誰もいなくなってしまった…。


さっきまでの賑やかな印象とは違い、静かになったロビーへと戻る。

とりあえず、ベンチに腰を下ろして考える。

こんな気持ちのまま、麻友理に会うのかと思うと複雑だった。


少し、頭を冷やさないと…。


目を閉じると、玲の濡れた唇が浮かんでしまう。


…玲も、俺を求めてくれたんだよな?


玲、――――。


やっぱり、離したくなんか、なかった。


どうしようもない思いが、胸を駆け巡る。


「……っ!!」


俺は、一生こんな思いを引きずって生きていくのか…?



―――――。



一人、頭を抱え込む俺の耳に届く、面会時間の終了を知らせる、アナウンス。


大きな溜め息と共に、立ち上がった。


行くか…。


はぁ…。


足取りは重く、気持ちもグダグダだ…。

気持ち、切り替えないと、な…。

神経質な、麻友理のことだ。

すぐに、何かを感じ取って、また、……。


「……っ。」


億劫な気持ちのまま、俺はエレベーターへと乗り込んだ。


面会時間はもう過ぎている。

少し顔を出したら、今日は帰ろう…。


感情を表に出さないように、軽く深呼吸をして。


よし。


コンコン――。


小さくノックの音を響かせて、俺はドアを開ける。