「あ。」


これって、…玲の、ハンカチ…?

忘れてったんだ…。

相変わらず、というか、…。

こういうちょっとしたところ、抜けてるんだよね。


どうしよう、―――。


今ならまだ、病院から出て、いないよね。


ベッドから足を下ろし、ハンカチを握りしめた。


少しクラクラするけれど、点滴も外れたし、ロビーくらいまでなら、大丈夫。


私はエレベーターで1階へと向かった。


面会の人々が、慌ただしく帰って行く。


まだ、たくさんの人がいるロビーを、通り過ぎようとした瞬間、玲の姿を見つけた。



玲だ、――――――。



「れ、――。」



声をかけようとして、踏み止まった。



―――――――!!



玲の隣にいたのは、航太、だったから。



「……っ!!」



え、―――。


何で、……?


どうして、一緒にいるの?



慌てて、自動販売機の横に、隠れた。



その、刹那、――――――。



そっと航太を、抱き寄せる玲に、息をのむ。



その仕草が、あまりにも自然で、…。



「……っ!!」



思わず、声を上げそうになって、慌てて顔を覆った。



何で、……?


やっぱり二人は、まだ…。



―――――――!!



違う、……。


私が、全部、壊したんだ。



玲の気持ちも、航太の気持ちも、考えないで…。



私が、この二人を、引き裂いたんだ……。