「また、来るね。」


そう言って玲は病室から出ていく。


「玲…。ありがとう。」


「うん。じゃあ、また。」


私は小さく手を振った。

穏やかな気持ちだった。

久しぶりに、素直になれた気がする。


いつからだろう…。

そうだな、…。

もう、ずっと前から、だ。

玲の前では、いつも気持ちが張っていたように、思う。


きっと、こうなる前から。


無邪気な笑顔を見せる玲を、いつの間にか、姉のような眼差しで見ていた。

何でも素直に受け取るし、一生懸命頑張っちゃう姿は、同じ歳なのに、可愛らしく見えて。

玲の、キャラ、なのかな…。

もう、可愛いなぁ。

こんな妹がいたら、楽しいだろうなぁって。


完全に、姉、目線、――――。


毎日違ったブランドバックを持ち、おしゃれな服に身を包んだ綾子と梨花。

彼女たちと、地方から出てきて親元を離れて生活する私たちとは、何かが違うんだって、思ってた。


ただの、コンプレックスだったと、今なら思えるのに。


でも、玲は違ったんだよね。


臆することなく、誰とでも仲良く付き合っていた。

玲を通じて、綾子や梨花とも仲良くなったけど…。

都会で生まれ育ってきた人たちとは、分かり合えない。

あの頃の私は、頑なにそう、思っていた。


仲良くなるにつれて、お互いを『親友』だなんて呼びながら。

心の奥ではずっとそんなことを思いながら、二人と付き合っていた。