「…玲、大人になったね。」


「…え、…?」


「前はキスひとつで真っ赤になって、可愛かったのに。」


航太は口角をきゅっと上げて、笑って見せる。


「…あ、いや…、

…えええ、―――――!!?」


「…ったく、―――。

相変わらず、可愛いよ。

玲は、変わってない。

……、幸せになれよ。」


「航太…。」


「…俺が、幸せにしたかったよ…。」


「幸せにするって、そう言ってくれたのにね。」


「玲の運命の人は、俺じゃなかったんだよ。」


航太は寂しそうに、呟いた。


「でも、玲には幸せになってほしいから。」


大きな手のひらで、私の頬をそっと撫でて。


もう一度、軽く、唇にキスを落とす。


「…これが、最後。」


「…うん。」


「元気で頑張れよ。」


「…うん…。」


これで、本当に終わり。


さよなら、航太。

さよなら、大好きだった人。


航太は私が見えなくなるまで、ずっと見送ってくれた。


「……ぅ、…っ。」


航太の姿が見えなくなってから、私は泣いた。


航太に大きく、背中を押されたように思えたから。


これで、本当に終わり。


苦しくて辛かったけれど、やっと自分に決着が付いた気がした。



航太を、好きになったこと、後悔、しない。


たくさんの愛を、ありがとう…。


お互いの道を、歩き出そう…。



航太、―――――。



大好き、だったよ……。