「ん?」


航太は不思議そうに私を見つめ返した。


「玲ちゃんは、どうしたのかな?」


「…っ!」


「食べさせて欲しいの?」


―――――!!


「…っ、もう、航太っ!」


あたふたする私に、ぐーっと、近づいて。

わざと覗き込むように顔を近づけるから、思わず後ろに倒れそうになる。


「玲のさ、その顔が好きなんだよね。

眉間に皺を寄せる感じが、可愛くて仕方ない。

どんどん困らせたくなる。」


「……っ!」


「あーん、て、させて?」


「やだっ!!」


あははは、と屈託のない笑顔を見せられ、私は途方にくれるしかない。


「今日は俺を優先してくれたから、これくらいで許してやるか。」


航太は私の頭をよしよしと撫でると、真っ赤になった私に微笑んだ。


やっぱりわざとだったんだ。


ん、もう――。


だいたい、普段は呼び捨てにしてるのに。


航太が「玲ちゃん。」と呼び始めた時は、注意が必要―――。


よし。


絶対、覚えておこう。


私は不貞腐れながら、そう思った。


でも、実際、そう、なんだよね…。


何だかんだ、麻友理を優先させてしまう自分が、いるんだ。


麻友理を理由に、航太のデートも断ってしまって…。