まだ17時だというのに、小さな焼肉屋さんの店内は込み合っていた。


「ここ、人気なんだよね。」


相席当たり前、という雰囲気で、お店の中はもくもくと白い煙が揺れている。

私たちはテーブルの端に並んで座り、ビールを頼んだ。

航太は背が高いから、狭そうに小さくなっていたけれど、私は肩が触れ合う感じが、ちょっと嬉しかったりする。


「ところで麻友理ちゃんは?
もう大丈夫なの?」


パンフレットをパラパラ捲りながら、航太は美味しそうにビールを飲む。


「うん…。
あんまり、大丈夫じゃないかな…。」


「そっか…。
じゃあ玲が側にいてあげるといいね。」


「うん。
出来るだけ一緒にいてあげたいんだよね。」


「いいな、麻友理ちゃん。玲を独占出来て。
俺も玲とずっと一緒にいたいな。」


「……っ。」


と、隣の人に、聞こえちゃうよ…。


あ、――。

ほら…。

目が合っちゃったよ…。


恥かしげもなく、そんな言葉を口にする航太に、私はちょっとうろたえてしまう。


「ほら、お肉焼けてるよ。」


「……っ。」


「はい。
美味しそうだから、これは玲にあげるね。」


「う、うん。」


もう…。

航太はいつだって、変わらない。

二人だろうが、大勢でいようが、私のことを甘やかす。


う、嬉しいんだけど…。


恋愛初心者の私としては……、

いたたまれない時もあるのです…。