「飲みに行こうぜ。」


久しぶりの誘いを、不思議に思わなかったわけじゃない。

カナダへ転勤が決まった俺への、壮行会のようなものかと思っていた。


待ち合わせに現れたのは、紺。


そして、――――。


「…綾子ちゃん?」


玲と麻友理の友達に会うのは久しぶりだ。

一緒に住み始めたと聞いて、納得する。


上手く、いってるんだ…。


お調子者の紺には、綾子ちゃんのようなしっかりした女の子が合うんだろうな。


お互い近況を話し合い、酒席は賑やかに盛り上がっていく。


「渡瀬さん、出発って、来週なんですよね?」


程良くアルコールが回った頃合いを見計らったように、綾子ちゃんは切り出した。


「うん。」


「一人で行くって本当ですか?」


―――――――!!


一瞬、固まってしまった俺に、紺は視線を逸らした。


…そういうことか。

麻友理に何か、聞いたんだな…。


「麻友理は……。

一緒に連れて行かないんですか?」


―――――――!!


綾子ちゃんの真っ直ぐな瞳は、あやふやな答えを求めていない。


ただ、正直に言うと、――――。

放っておいて欲しかった。


何の関係が、あるんだよ。

それを聞くために、付いてきたのかよ。

ったく、紺も紺だ。

そういう話なら、断ったのに。


「…一人で…、行こうと思ってるよ。」