気付くと、玲はお店から出ていってしまった。

仕事…中、だったのかな。

同僚らしい人と一緒のようだった。


ああ。

何でだろう……。


ほっとする自分と、追いかけたい自分がいて、混乱する。


「玲ちゃんとはね、久し振りに会ったの。
元気そうで良かったわ。
そう…。麻友理ちゃんと仲が良かったのね…。」


「ええ。
時々、友達から名前を聞いてたけど、会うのは久し振りです。
頑張ってるみたいで、凄いなぁ。」


千尋さん、――――。

私と玲の事…、わかってて、言ってる…?


「……っ。」


そんなの、聞けるわけ、ない…。



刹那、――――。


私はおもむろに席を立っていた。


「私、玲の連絡先、聞いてきます。」


「え…。」


「久し振りだったから…。
今度また、ゆっくりと会いたいですし。」


「あら…。
早くしないと行っちゃうわよ。」


千尋さんは、店の入り口の方を振り返りながら、言う。


「早くいってらっしゃい。」


怖かった。

千尋さんに知られるのが怖かった。


もし、すでに知っていたら?

うううん。

玲も航太も、千尋さんにそんな話をするはずが…、ない。

玲は…絶対、そんなことしないって、わかってる。


でも、―――――。

言わなきゃ…。

ちゃんと言っておかなきゃ。

もう、このまま行くしかないんだもの。


先に、手を打たなきゃ、――――。