「玲…、久し振りだね。」


咄嗟に、首を傾げて。

ちょっと照れたように、はにかんで見せる。


「元気だったの?」


「……っ。」


茫然とした表情が、歪んでいく。

何で笑えるのって、思ってるんでしょう…?

玲の考えていることなんて、お見通し。

だって、私たち、親友だったじゃない。


「あなたたち…、知り合いだったの?」


玲の後ろから、千尋さんの声が、した。


そう。

ここは、千尋さんの目の前で。

私は間違っても、失敗することは許されない。

ようやく、ここまで、来たんだから。


何も答えられない玲に代わって、

「学生時代の友人です。」

と、満面の笑みを浮かべて千尋さんを見入る。


「ほんと、久し振りだね。」


「…うん。」


何か言いたそうな顔をして、玲は私を一瞥する。


だけど、―――。


「じゃあ、――――。
千尋さん、失礼します。

…麻友理も、じゃあね。」


直ぐに表情を正して、それだけ言うと、奥のテーブルへと歩いて行った。

その後ろ姿が、ピンと張り詰めているのが、痛いほどにわかる。


私と顔を合わせたのが、苦しいんでしょう?

わかってるわ。

私もここから、逃げ出したいくらいよ…。