「放っておきな。
関わらなくていいんだから。

今まで通り。時間が解決してくれるよ。」


「んっ、…。」


せっかく納まったと思ったのに。

激しく突き上げてくる感情が、私の理性を奪っていく。


「桜木さんが男だったら、絶対、惚れそう…。」


「もうすぐ嫁にいく女を掴まえて、何、言ってるの。」


けらけらと笑いながら、桜木さんは私の頭を優しく叩く。


一人だったら、耐えられなかったと思う。

これで、終わったんだよね。


もう、これで最後だよね。


桜木さんは私が泣き終わるまで、静かに待ってくれていた。


「振り返る時間があれば、翼(たすく)君に会いに行ってきな。」


「…うーん…。」


「過去より今よ。
翼君とはどうなってるの?」


「翼とは、付き合ってるわけじゃ…。」


「私たちからしてみたら、立派に恋人同士だけどねぇ。」


「でも、……。」


「翼君は、吉野の事、ちゃんと見てるよ?
吉野も逃げてないで、ちゃんと向き合ってみなさい。」


桜木さんは真っ直ぐに私の目を見て言った。


「はい。わかってます…。」


泣いたことで、すっきりした。


麻友理にもちゃんと言えた。


これで、きっと前を向いていける。


もう、こんなことに、縛られてなんか、いられない。