「千尋さん、知らないの。 

っていうか、渡瀬家はみんな私と玲が友達だったってこと、知らないの。」


友達だった……。


麻友理は確実に、私に爆弾を落として行く。

麻友理、何が言いたいの?

緊張してきたのか、心臓がキリキリと悲鳴を上げはじめた。

携帯を持つ手が…、震え出す。


「だからね、黙っててくれないかな?」


「えっ?」


「私と玲が仲が良かったってこと。

知られたらね、何かやっぱり印象良くないよね。

友達同士で彼氏を奪い合ったって思われたら、嫌じゃない?」


――――――!!


思わず、息を飲んだ。

驚き過ぎて、声も出なかった。


「言わないでほしいの。

ねっ、お願い。」


――――――!!


「…麻友理。

お願いって、私もう誰とも連絡取ってないよ。

千尋さんとも今日、偶然会っただけだし。」


「そうなんだ。

…でもこれからは、わかんないじゃない?

私たちがカナダに行っちゃったら、連絡取ったりするかもしれないでしょう?

だから、一応。

ちゃんと言っておかなきゃって思ったから。

ねっ?」


何、言ってるの……?

ふざけないでよ。