「ねぇ、ねぇ。
麻友理、行かないの??」
綾子は気落ちした声を出して、麻友理の腕を掴む。
「うん…。
だって、滑ったことないんだもん。」
雪が降ることが珍しい、温かな地域で育った麻友理。
「ボードとかやったことないし。」
「チャレンジしてみたら、楽しいかもよ?」
「怖いもん。興味、ないし―――。」
「佐藤君が教えてくれるって、言ってるよ?」
なんとか麻友理も誘い出したい綾子が、必死に頑張ってみても…。
「うーん…。由樹と会う約束してるし。」
「そっかぁ…。」
最近、麻友理は密に高橋君と、連絡を取り合っているようだった。
別れてすぐは、決して自分から連絡しなかったのにな。
それは麻友理なりの、プライドだったんだと思う。
でも、帰省した時にばったり会っちゃったらしい。
「地元一緒、なんだもん。
友達も一緒だし、仕方ないか。」
って、笑ってたけれど…。
俺が守ると息巻いて、一緒に上京してきたんだもんね…。
高橋君は麻友理のことを、周りの友達に聞いて知ったようだ。
何も言ってこない麻友理が、もどかしかったみたいだけど…。
「罪悪感…、てやつ?
謝ってほしいとか、そんなこと、全然望んでないのに…。」
そう言って、麻友理はまた泣いた。