そんなあたしの叫びに耳も貸さず、火の精霊は淡々としている。

「我々精霊は、神よりも人間と共に生きてこそ意義が有り。これは長の意見」

「ふん」

 火の精霊の言葉に、ジンは冷たく笑った。

「アグアを幽閉するような人間と、仲良く共存しろと?」

「おそらく、長には長なりの思惑が有り。我らは長に従うべし」

「長なりの思惑、ねえ。土の精霊、お前はどう思う?」

 急に話を振られて驚いたのか、土の精霊が息をのんで体を固くした。

「お前達は、水の精霊達と親密だったよな。どう考えているんだ?」

「あ……」

 土の精霊は落ち着きの無い様子で、両手の指をモジモジさせて俯きながら、可愛らしい声で話し始めた。

「アグアは、かわいそうです。とてもかわいそうです」

「そうか。そう思うか」

「はい。なんとかしてあげたいです。だから風の精霊のきもちが、よくわかります」

「……うん」

 ジンの声は少し柔らかくなった。

 それに安心したように、土の精霊の表情も落ち着く。

「あ、あの、火の精霊。風の精霊やモネグロスを、たすけてあげられませんか?」

 小さな土の精霊が、大きな火の精霊を見上げて訴えたけれど、火の精霊は無言のままだ。

 その無表情に向かって、土の精霊が懸命に話し続ける。

「わたしは、アグアをたすけたいです」

「長を裏切れと言うのか?」

「い、いえ。そうじゃないです。ただ……」

 土の精霊がプルプルと首を振ると、豊かな緑の髪が大きく揺れて、木々の葉が擦れるような音がした。