あたしを抱え込む腕の力がどんどん強くなる。

「さあ! 早くなさい! さあ!!」

 モ……モネグロス。庇ってくれてありがとう。

 それはとっても嬉しいんだけど、あなたの腕の力が強すぎて、あたしさっきから全然呼吸ができないんだけど!

 この腕の位置、ちょっとズラして! 頭! あたしの頭解放して!

「モネグロスは、そのまま放置せよとの、王の言葉なり。自分は神に何の用も無い。邪魔だから捨て置けとの言葉」

「……!」

「ゆえに、モネグロスは連れて行かず」

 モネグロスの腕からスッと力が抜けて、あたしはブハッと頭を上げながら、モネグロスの顔を見上げた。

「……! モ、モネグロス……」

 モネグロスは……声も出さずに泣いていた。

 とても言葉では言い表せない、その哀しげな表情を見て、あたしの胸は鋭く痛む。

 仮にも神として信仰を集め、崇め奉られていたモネグロス。

 その自分に対して、

『何の用も無い。そんなもの、邪魔だから捨て置け』

 しかもその残酷な言葉は、自分がこよなく愛し続けた人間の口から吐かれた言葉だ。

 あたしの脳裏に、再び苦悩の記憶がフラッシュバックする。

 彼があたしに向かって吐き捨てた、数々の別離の言葉。

 もう、あたしは彼にとっていらない存在。

 それどころか、邪魔でしかない存在。

「最低……」

 今度はあたしがモネグロスを抱きしめた。

 その頭をこの胸に、強く強く抱きかかえる。

「最低よ! 狂王は最低だわ!」