「番人? なにそれ?」

「砂漠に人間が不用意に入り込まぬように、番人を配したのです」

 おでこを撫で摩りながら、モネグロスが思い出したように言う。

「でも作った時より一度も会っていないので、存在をすっかり忘れていました」

「……あんたねぇ……」

 文句を言おうしたら、砂丘がみるみる小山のように盛り上がっていくのが見えた。

 あっという間に、船の大きさを遥かに上回るほどの巨大な山に変貌する。

「あぁ……」

 恐怖と共に呆然と砂山を見上げていると、山の天辺から砂が大量に流れ落ち、ついに中から番人の姿が現れてきた。

 その全容を現した番人の姿は、まさに巨大な……

 巨大な…………。

「……はにわ?」

 これ、もろに『はにわ』だわ。

 のぺっとした凹凸の無い全身と、見事に省略化された単純な手足。

 両目と口は、ぽっかり開いた丸い穴みっつ。

 紛うことなく、はにわ君だ。モネグロス、あんたのセンスってどうなってるの?

 半分呆れて見上げていたら、はにわ君があたし達に向けて、無表情にゆっくりと右手を上げた。

 あら、意外と愛想良しね? 挨拶してくれるのかしら?

 と思ったら、ものすごい勢いで、はにわ君がその手を船めがけて振り下ろした。

「危な……!」

 突風が巻き起こり、船が素早く後方に移動して、間一髪で叩きのめされるのを免れた。

 あ、危……危な……! なに!? このはにわ君!

「完全に戦闘モードじゃないの!?」

「番人は、無条件に人間を排除するように作りましたから」

「人間? 人間って……」

 モネグロスとジンの視線が、一気にあたしに集まった。

 あたしか!?