銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「なに!? なに―――!?」

 体が吹っ飛ばされる!

 ……と思った瞬間、ジンがとっさにあたしの手首を掴んでくれた。

 強く握られた手首と腕の付け根が、外れそうに痛む。

 勢い良く傾いだ船が、横倒しの体制のまま砂に激突しそうになった。

「きゃあああ―――!」

 ジンの銀の髪がザアァ!と逆立った。

 彼の足元から強烈な風が渦巻き、服が風をはらんでバタバタと音をたてる。

 体が吸い上げられそうな強烈な風に助けられ、ぶわりと船体が浮き上がった。

 横倒し状態から、なんとか正常な体制に戻った船の船底が、ズウン!と砂地に叩き付けられる。

 その激しい反動で、あたしは今度こそ床にスッ転んでしまった。

「い、痛……。何が起こったの?」

 なんとか上体を起こし、慌てて周囲を確認すると、ジンがふわりと宙に浮いている。

 彼の険しい視線を辿ると、船の前方に小高い砂丘が盛り上がっているのが見えた。

 あれにぶつかったのね。でも今までずっと平坦な砂漠だったのに、何でいきなり……。

「いきなり何事ですか!?」

 モネグロスが、おでこに手を当てながら船室から飛び出してきた。

「モネグロス、大丈夫だった!?」

「床に放り出されて目が覚めました! 何事です!?」

「あれだ」

 ジンが指差す砂丘を見たモネグロスが、あっと声を上げる。

「あれは!」

「なに? あれはなんなの?」

「以前に私が作った、番人です!」