銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「お前は本当に、神に対して敬意が無いな」

 ジンがつくづく溜め息をつく。

 うーん。そうかしら? そうかもね。向こうの世界で、ほとんど信仰とは無縁の生活を送ってたからなぁ。

 『神様』って言われたところで、いまいちピンとこないのは事実だわ。

「でもあんただって、人の事言えないわよ。かなり無礼だわ」

「オレはいいんだよ」

「モネグロスにだけ、あんな無礼な態度をとってるの?」

「……」

「違うの? ひょっとして、どの神様にも同じような態度?」

「……」

「それって、単に礼儀知らずなだけじゃないの」

 あー、いるのよねぇ。妙にプライド高くて、人に頭を下げられないヤツって。

 なるほど。ジンってそういう部類なわけか。

「オレは自由な風の精霊だから、それでいいんだよ!」

「自由と一般常識の無さを、自分勝手に混同しないの。そんな理屈、社会じゃ通用しないわよ」

「……お前、アグアと同じ事を言うんだな」

「へぇ? アグアさんにも注意されたんだ?」

「……」

 むすぅっと黙り込んだジンを見て、つい笑ってしまった。

 子どものようなモネグロスを支えて、奔放すぎるジンを諌めるアグアさん。

 人間じゃないけど、人間味のある日々を、皆で一緒に過ごしていたんだろう。

 きっと、とても大切で幸せな日々だったんだ。

 取り戻させてあげたい。奪われてしまった、宝物の日々を……。

―― ドオンッ!!

 突然、立っていられないほどの激しい衝撃に襲われた。

 船体が斜めになって、あたしの体が宙に飛ばされる。