銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 あたしを気遣ってくれるその言葉と態度に、ますますうろたえてしまう。

 さらに恐縮してしまって、ますます本当の事情を言えない空気になってしまった。

 わ、話題を変えよう! それがいいわ!

「ジンとモネグロスってずいぶん仲が良いのね!」

 ことさら明るい声を出して、強引に場の空気と気分を変える。

 でも、本当に仲が良いふたりよね。

 神様であるモネグロスに対して、ジンってばタメ口きいてるし。

 神に対して無礼だ無礼だってあたしを怒るわりに、自分もかなり礼儀知らずだと思うんだけど。

 でもモネグロスも、それを当たり前に受け止めてるみたいだし。

「モネグロスとは、ずいぶん長い付き合いなんだ。この砂漠を渡る風は、ずっとオレの風だったのさ」

 ジンが、どこか自慢そうな声でそう言った。

 砂漠を渡る風、かぁ。そうね、砂漠に風は付き物だものね。

 砂を運び、砂丘をつくり、刻一刻と景観を変える黄色い広大な大地と、吹き渡る風。

 これぞ美景の妙だわ。砂漠と、水と、風かぁ。

「あなた達は、深い絆で結ばれた仲間だったのね」

「ああ、そしてこの船もな」

 穏やかな笑顔で、ジンは優しく船の縁を撫でた。

「この船、アグアさんの事をすごく心配してるわ。とても会いたがっているの」

「……分かるよ。よく」

 ジンの表情が翳る。ジン自身も、さぞかし気掛かりなんだろう。

 今頃、アグアさんがどんな目に遭わされているか。どんなに悲しい思いをしているか。