拷問や、公開処刑。

 おんな子どもに至るまで、無辜の民が無残に命を奪われ、おびただしく流される血。

 眷属は消滅し、神殿も廃墟と化し、神の存在も、もはや風前の灯。

 人質同然に幽閉されてしまった、無事かどうかも定かではない仲間を救うために、自らの命の危機を顧みず立ち上がった者達。

 この世界の惨状を前にして……。

『男に振られたんです。あてつけに死んでやろうとしたんです。そしたらこっちの世界に来ちゃったんでーす』

 …………。

 い、言えない。とても言えない。

 勿論、あたしにとって重大な出来事だったのよ!

 間違いなく、本気で苦しんで傷付いたし、今だって苦しいし、悲しいし、深く傷付いてるわ!

 人の苦悩に大小の差なんて無いし、順位も無いわよね!?

 ただ……どうしても、身が縮こまる思いになる。

 言葉が出てこなくて、うろたえているあたしを見て、ジンがまた謝罪する。

「済まない。余計な事を聞いてしまったか?」

「あ、いえ、そうじゃなくて……」

「よほど辛い事なんだろう。簡単には話せないだろうな。悪かった。もう無理に聞こうとしないから、許してくれ」