「本当に、大丈夫です。私は今ここで倒れるわけには……アグアに会うまで、絶対に消滅するわけにはいきません」

 弱った体で、それでもモネグロスの目だけは凛としている。

 愛するアグアに会いたい。その一念。強い強い意志と希望のたまものだろう。

 それは自分の消滅すら厭わない、真実、偽りの無い愛の姿だ。

「私は雫に感謝しているのです。私にとって、何より大切なアグアを取り戻すために踏み出す勇気と、決意を与えてくれた」

「そんな、あたしは別に……」

「ああ、早くアグアに会いたい。アグア……アグア、アグア……私の、愛しい、君よ……」

 口の中で何度もアグアさんの名を呟いて、そのままモネグロスはスゥッと寝込んでしまった。

 苦し気な土気色の顔は、それでもわずかに微笑んでいる。

 ……アグアさんの夢を見ているんだろうか。

 子どものように純粋で、一途な寝顔を見ていると、胸が詰まって泣きそうになる。

 真っ直ぐに、真摯に、こんなにもアグアさんを深く愛しているモネグロス。

 彼がアグアさんから深く愛される理由が、なんとなく分かった気がする。

「船室に運んでくる。少し休ませよう」

「うん。お願い」

 ジンがモネグロスを抱きかかえ、船室に運んで行くのを見送って、あたしは空を見る。

 気前良くコロナを吐き出す灼熱の双子太陽は、相変わらず尋常じゃない熱気を発散し続けている。

 きっと、この暑さもモネグロスの体には障るだろう。

 本当にこれは、彼の愛と命を賭けた船出なんだ。