「雫がこの世界に来た事には、何か特別な意味があるのでしょう」

「特別な、意味……?」

「そうです。なぜなら、あなたがこの地に降りた途端、今まで膠着していた事態が、急に動き始めたのですから」

「……」

「雫が来てくれた事は、偶然ではない。きっと必然……」

 モネグロスの体が急にグラリと倒れかけて、ジンが慌てて支えた。

「モネグロス!」

「……大事は、ありません、よ」

 モネグロスは笑って答えたけれど、神殿にいた時よりも具合が悪そう。

 グッタリして全身から力が抜けてしまっているし、なんだか影が……薄い?

「ね、ねぇジン。なんだか存在感まで薄くなってない?」

「……」

「ジンってば」

「やはり神殿から離れるべきじゃなかったのか」

 ジンが、心配そうにモネグロスの顔色を確認しながら呟いた。

「え? 神殿から出たせいで具合が悪化したの? なんで?」

「神殿は神のための場所だ。多少は守護の作用が働いていたんだろう」

「そんな……」

 じゃあ、神殿から出なかったのはそのせい? 出たくても出られなかったの?

 ジンがモネグロスを引き止めようとしたのは、これを心配して?

 ……あたしのせいだ。

 詳しい事情も知らずに、ヘタレ男だって決め付けて、男のクズだのカスだの、散々罵倒して無理やり引っ張り出したから、こんな事になってしまった。

「モネグロス御免なさい! あたしのせいで!」

「雫のせいではありませんよ。きっとただの船酔いでしょう」

 そんなわけない!
 そんなに辛そうなのに、あたしに気を使って……。