銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「ただ、そのせいで狂王に目を付けられてしまった。アグアは今、狂王の住む城内に幽閉されている」

「幽閉?」

「あぁ、厳重にな。逆らう精霊への見せしめだよ」

 モネグロスはあたしのハンカチで顔を覆い、全身を震わせてシクシク泣いている。

 幽閉だなんて、そんな、可哀想に。

 アグアさんは、ただ愛する男の元へ戻りたいだけなのに。

 砂漠と水という、お互い必要不可欠な存在を、我欲や見せしめって理由だけで引き裂くだなんて。

 ほんと、恥知らずね狂王って! まるっきり自己中な、ただの暴君じゃないの!

 異世界の人種だけど、同じ人間として恥ずかしいわ!

 本当に人間って、地位と権力を手にするとロクな事にならないわね!

 うちの二代目社長も、父親の跡を継いで社長になった途端に、したい放題!

 何をカン違いしてんのか、社員食堂のメニューや、慰安旅行の部屋割りにまで首突っ込んできやがって!

 地域の二代目ボンボン仲間と、商工会議所で談笑でもしてりゃいいのよ! おとなしく!

 トップの人間が始末におえないと、周りの皆が不幸になるんだわ!

 ああもう、冷静になるどころか、ますます腹が立ってきた!

 だいたいねぇ、愛し合う仲を引き裂くようなヤツに、ロクなヤツはいないのよ!

 常識やモラルから逸脱した欠損人間なのよ! 社会にとって、害悪しかもたらさない害虫なのよ!

 そんな人間、どーんと天罰でも、仏罰でも下してやればいいんだわ!

 害虫駆除に遠慮は無用! 盛大にブチかましてやりゃいいのに!