銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 あたしはハッと我に返った。

 風の精霊の、何かを探り出そうとしている視線が居心地悪くて、急いで話題を転換する。

「で、でも、ここまで深刻化する前に何とかできなかったの?」

 あっちの世界にだって天罰とかあるくらいだし、一度デッカくお灸を据えりゃあ、王様も我に返ったでしょうに。

『あ、ヤバい。いい気になりすぎた』って。

「雫の世界では、神がそんなに簡単に他種に干渉してくるのですか?」

「え? ううん。そんな事はないけど」

「そうでしょうね。恩恵を与えるならまだしも、こちらの都合で勝手に相手に損害を与えるなど、許されません。それが摂理です」

 うぅ~ん。
 というか、向こうの世界は神様の存在そのものが、まず不確かなんだけど。

 って事を教えたりしたら、この場がパニックになりそうだから黙っていよう。

「だって向こうが先にケンカを売ってきたんでしょ? 自衛権ってのは無いわけ? 自衛権は」

「像を壊したり、本を焼いてるだけだ。神に直接攻撃はしていない」

「あ、そうね」

「である以上、いくら偉大な神でも無碍な事はできないんだ」

 風の精霊が、さも忌々しそうな表情で言った。

「出来るからといって、何でも後先考えずにやって良いってわけじゃないのさ。残念ながら」

「えぇ。我々神は、この世界を守らねばならないのですから」

 自分に言い聞かせるようにモネグロスが頷く。