銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「金の髪飾りも、風の力も、異世界の人間の涙も、全ては愚かで無意味」

 淡々と語る番人の声。無意味だと語るその声にすら、何の意義も感じられない。

 ……きっと、本当に、無意味なんだ。

 番人にとってこの世界における全ては、無意味なんだ。

 命も、愛も、涙も、なにもかも全て、価値のカケラもない。

 唯一、始祖の神の復活だけ。

 ただそれだけが、番人の……。

「この世界は罪に汚染され、始祖の神によって破壊される。ただそれだけが現実である」

 両腕を大きく広げ、暗く渦巻く天を仰ぐ足元には、瀕死のヴァニス。

 体中に杖の突き刺さった断末魔の姿、浮かぶ死相。

 ああ……あたし達はまるで、神の裁きを待つ罪人のようだ。

 終末の時を向かえ、呆然と、超越せし者の姿を下から見上げるのみ。

 圧倒的な力を前に、それでも、それでも……


 それでも


『死にたくない』と、懸命に足掻き続ける。


 それが無意味? 愚か?

 いいえ、無意味じゃない。

 決して無意味じゃない。愚かでもなんでもないし、破壊だけが現実でもない。

 それは違う。

 あたしは、それを、知っている。

 だからあたしは……絶対に、拒絶する!!

―― ザアァァッ!

 突如、形容し難い不思議な音が聞こえた。

 それと同時に、天を仰ぐ番人の体が大きくビクン!と震える。

「たしかに私は、愚かにも道を踏み外し、罪を犯した」

 不意に響く、場違いなほどの静かな声。

 ……誰?