銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 もう彼には頭を上げる気力も無く、視線だけが朦朧とこちらを見ている。

 肩からは銀色の気体が漏れ続け、全身が銀に染まっていた。

 半分飛んでいたあたしの意識が、ジンの存在によって少しずつ動き始める。

 そのジンの姿が一瞬、霞んだ。ぼうっと淡く光って、まるで蛍のように瞬いている。

 あれは……あの光は……

 ……


 消滅の光!?


 あたしの脳は、一気に覚醒した。

 頭から冷水を浴びせられたように、血液が凍りそうな衝撃を受ける。

 あれは、水の精霊やモネグロスが消滅した時と同じ光だわ!

 まさか、ジンが消滅してしまうの!?

「いやあぁぁっ! ジン―――!!」

 あたしは転がるようにジンの所へ駆け寄った。

 ジンの体に縋り付き、懸命に両腕で揺さぶる。

「ジン! しっかりしてジン―――! 嫌よ嫌! 死なないで! それだけは嫌あぁぁ―――!」

 ジンは揺さぶられながら、ほとんど意思の消え去ってしまった曖昧な目であたしを見上げた。

 もう、意識は混濁してしまっているのかもしれない。あたしの事も分かっていないのかもしれない。

「ジン! ジン! ジン!!」

 それでもあたしは狂ったように叫んだ。

 あたしの頭も体も心も、爆発して粉々に砕けてしまいそうだった。

 ……それでもいい! 砕け散っても構わない!

 そしたら、そしたら最期に水の力が発動するかもしれない!

 まだ彼には質感がある! まだ間に合う! 助かるわ!

 あたしの命と引き換えに助けられるかもしれない!