銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 あたしの目に映る、とても信じられない光景。

 ヴァニスの、体中に……針山のように杖が、突き刺さ…………。

 現実とはとても思えなくて、あたしはヒィヒィと細い息を吐き、目に映るものを懸命に否定した。

 嘘よ。こんなの嘘だわ。

 こんな残酷な光景、あるはずがないもの……。

 半分意識を失っているあたしの横で、番人は石柱を眺めている。

 生贄を捧げられた石柱が白い光を放つのを、いまかいまかと待ち構えている。

「……?」

 でも石柱は、光らなかった。

 訝し気な表情の番人は串刺しのヴァニスのもとへと近づき、身を屈めて覗き込む。

 そしてゴソゴソとヴァニスの胸元を探り、そこから何かを取り出した。

 金色と赤色の混じったそれは、マティルダちゃんの髪飾りだった。

「これにより致命傷を避けたか」

 マティルダちゃんの髪飾りが、ヴァニスを守った?

 守って……くれたんだ……。

「無意味な……」

 番人は、無感動に言い捨てる。そして振り返り、こうも言った。

「風の力で杖の勢いを弱めたか。それもまた、無意味」

 風の、力……?

 番人の視線の先には、地面に這いつくばるジンの姿があった。