銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「信じられない! 本当にそんな恐ろしい事をしたの!? 狂ってるっていうよりも、純粋にバカなんじゃないの!? その王様!」

「本当にやったのさ。それが狂王と仇名される理由だ。そして人々は恐れ慄き、先を争って神への信仰を捨て去った。その結果……」

―― ドォンッ!

「きゃ!? なに!?」

 その時突然、ホール全体に大きなハンマーで殴られたみたいな衝撃が走って、あたしは腰が抜けるかと思うほど驚いた。

 見れば、ホールの真ん中の床が、直径5メートルもの大きさで一気に陥没している。

 な……なんでいきなりこんな!?

―― ドンッ! ズゥン!

 考える間も無く、たて続けに振動が走る。

 床の陥没がさらに広がり、10メートル以上の大穴が開いてしまって、あたしは慌てて後ろに下がった。

「あぁ……また神の像が破壊されたのですね……」

 モネグロスが頭を抱えて、悲壮な声で呻いた。

「ど、どういうことなの!?」

「見ての通りさ」

「見ても分かんないわよ! 全然!」

「神の像がひとつ壊されるごとに、神殿が崩れていくんだ」

 書物がひとつ焼かれるごとに、眷属たちが消えていく。

 王の命ずるまま、人間が次々と神への畏敬の念を捨てていく。

 神の力は衰弱し、衰え、次々と神の世界に悪い影響が現れ始めた。