「ノーム! あんたってどこまで素晴らしい子なの!?」

「……」

 あたしの称賛にノームは答えない。

 照れてるのかしらと思ってノームの顔を覗き込んで、あたしはすぐに事態の緊急性を察した。

 ノームの全身が細かく震えている。

 体も、表情も、伸びる蔓も、全てが固く硬直して張りつめてしまっている。

 ちょっとでも突付くと、いまにも破裂しそうな緊張感。

 その尋常では無い雰囲気に、あたしは強い胸騒ぎを感じた。

「ノーム……?」

 あたしは、恐る恐るノームに触れようと手を伸ばした。

「さわ、ら……ないで……」

 ピクン、とあたしの手が止まる。

「さわら、ない、で。今、ちょっとでも、さわられ、たら……」

 抑揚の無い、途切れ途切れの発音。

 痙攣のように全身を震わせながら、ピクリとも動かない強張った表情で、ノームは声を出す。

「ジ、ン……きこえ、ます、か……?」

 真っ直ぐ前を見たまま、ノームはジンに話しかけた。

 ジンは苦痛に歪んだ顔を僅かに動かし、ノームの方をチラリと見る。

「風の、ちからで、みんなを、上まで……」

「……」

「おねが……わたし、もう、もたない……」

―― ズウゥゥ!

 振動が響き、土の壁が揺れ動き始めた。

「ぐう!」

 ノームの体がビクリと動き、ノドから奇妙な音が聞こえる。

 慢心の力が蔓に込められ、壁は動きを止めた。

 そしてその代わりに……

―― ビシュウッ!

 ノームの体のあちこちから、緑色の液体が出血のように噴き出した。