向こうの土の壁が、こっちに向かって動いてきてる。

 音を立てて揺れながら、ジワジワと接近してきているのがハッキリ分かった。

 向こう側の壁だけじゃない。こっち側の壁も、向こう側へ向かって動いてる。

 この穴が……狭まっている!!

 穴を閉じてしまうつもりなんだわ!!

 あっという間に壁は接近してきて、上からは岩や土や砂が、どんどん頭に落ちてくる。

 両手で頭を覆いながら、あたしは動く壁を呆然自失状態で見ていた。

 来る! 潰される! このままだと壁に潰されて全員殺されてしまう!

「うあああぁぁぁっ!!」

 あたしの恐怖の悲鳴と、ノームの勇ましい雄叫びが重なった。

 同時にノームの全身から、今まで見た事も無いほど大量のトゲ蔓が放出される。

 目の前が一瞬、伸び上がる蔓で完全に緑に染まって、四方八方に伸びた蔓は壁にメリメリ食い込んだ。

「ぐ、うううぅぅぅ―――……」

 両目を極限まで見開き、歯を食いしばり、ノームはブルブルと震えながら空を見据える。

「ううぅぅぅ―――……」

 ノームは凄まじい表情で頭をブンブンと振り回し、息を吸い込んで……

「うぐうぅぅああああ―――――!!」

 身を反らせ、耳を塞ぎたくなるほどの大音量で絶叫した。

「ノ……ノーム――――!」

 …………。

 やがて……

 シ――ンと、周囲が静まる。

 薄っすらと目を開けて、恐る恐るあたしは周りを確認した。

 すると、壁が……

 壁の動きが……止まってる――!!

 凄い! やったわノーム! ブラボー! スタンディングオベーション!

 総立ちの拍手喝さいよ――!