使命。誇り。

 こんな少女の口から聞くには厳つ過ぎる言葉。

 それを微笑みながら堂々と言ってのけるノームの姿に、胸が痛む。

 イフリートは使命と誇りに殉じた。

 ノームは、彼が最期まで大切にしていたものを守ることで、彼への想いを昇華させようとしている。

 なんて強く、たくましい子なんだろう。

 まさにこの子は大地の子。土の精霊だわ。

 痛ましさと感動の入り混じった複雑な気持ちで、あたしはノームを見つめた。

 胸が詰まって言葉にならないあたしに、無理に元気な声を出しながらノームが急かす。

「さあいそぎましょう。わたしが木の根をつかって上まで……」

―― パラパラ……

 頭の上から、少量の小石と砂が降ってきた。

 上を見上げて、そこになにか違和感を感じたあたしは、眉を寄せて様子を窺う。

 なにかが変だ。なんだか……なんだか穴の縁が……

 穴の縁が、動いている?

―― ゴゴゴ!!

 その大きな振動が響き渡るのと、ノームの顔色が変わるのと同時だった。

 木の根にぶら下がっているあたし達の体が振動に晒される。

 なに!? 地震が起きたの!? ずいぶん大きな……

―― ズウゥゥ……ン!!

「きゃああ!?」

 さらに大きな振動で体が揺らされ、あたしは悲鳴を上げた。

 ちょっと! 揺らさないでよ! 下に落ちたらどうしてくれるのよ!

「ジン、ヴァニス、大丈夫!?」

 ふたりの方を確認しながら叫んだあたしは、そのまま口を開けて固まった。