銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「ノーム! ありがとうありがとうノーム!」

 大切なイフリートを目の前で失い、絶望に打ちひしがれていたのに。

 あたし達を助けるために立ち上がり、飛び込んできてくれたのね!

 まだあどけなさの残るあなたのどこに、これほどの勇気と行動力があるんだろう!

「あなたって凄いわ!」

「ぜぇ……ぜぇ……」

「だ、大丈夫!?」

「ぜぇ……ぜぇぇ……だいじょう、ぶです……」

 ノームは、喘息の発作のような呼吸を繰り返している。

 よく見ると目の周りがひどく黒ずみ、水分を失ったように萎れていた。

 そういえば以前、トゲの蔓はそうそう簡単に出せるものじゃないって聞いたわ。

 それをあんなに大量に出してしまって、大変な負担を強いてしまったんじゃないかしら!?

「ノーム! あなた本当に大丈夫なの!?」

「へいき、です。あのふたりにくらべたら」

 ジンとヴァニスは負傷した部分を手で覆い、苦悶していた。

 その手は赤色と銀色に染まってしまっている。

 ノームもこの状態だし、早く治療しないと!

 水! お願い水の力! みんなを助けて!!

 あたしは両手をパンパン打ち鳴らし、懸命に祈った。

 水の癒しの力……治癒の力……どうか、どうかみんなを助けて!

「…………」

 ところが、何も起きない。

 体の中の水が湧き立つ感覚が、ひとつも起こらない。 

 あたしはバンバンバンと両手を連打しながら、顔が真っ赤になるほど力を込めて祈った。

 ちょっと! なにしてんのよ水の力! さっさとなんとかして!

 早く! 早く! 今すぐ治癒の力が必要なのよ!

 必要、なの、に!

「なんで何も起きないのよ!?」