銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 髪を靡かせ、弾丸のようにノームは飛ぶ。

 そして狙い違わず、あたしの胸の上に着地した。

 同時に、土の壁の側面からベキベキと巨大な植物の根が飛び出してきて、あたし達の体にグルグルと巻きつく。

 あたし達はぶら下がり、振り子のようにブラブラと大きく揺れた。

 た……

 助かった―――――!!

 ノームがあたし達を救ってくれた!!

「ありがとう! ノー……」

 !?

 感謝の言葉も言い終わらぬうちに、石の槍が嘘のように大量に襲い掛かってきた。

―― ビュルルルッ!

 凛々しい表情のノームの両手からも、負けじと大量のトゲの蔓が飛び出す。

 それは鞭のように大きくしなりながら、石の槍へ向かっていった。

 蔓は槍に巻き付き、殴りつけ、悉く敵を粉砕する。

 砕かれてボロボロになった石の槍が、次々と奈落の底に吸い込まれるように落ちていく様を、あたしは目を丸くして見ていた。

 す、凄い! 凄すぎるわノーム!

 この子、自分の事を攻撃系じゃないって謙遜してたけど……どっこい、骨の髄まで攻めの女よ! あなたは!

 それでも、またも壁からは次の石の槍の群れが飛び出そうとしている。

 しつこい! これじゃいつまでたっても……

―― ドドド……!

 地を這うような振動が響き、ぶっとい木の根が壁全体から飛び出した。

 まるで軟体動物の足のようにうねりながら、木の根は壁の側面を覆い尽くし、槍の動きを包み込んでしまう。

 押さえつけられた石の槍達は、木の根を突き破らんばかりに暴れていた。

「ぜぇ……ぜぇ……」

 石の槍全部を破壊したノームは、激しい呼吸にノドを鳴らした。

 両手のトゲ蔓は萎れたように力を失い、ダランと垂れ下がっている。