銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「狂王は、自分が神より偉大な存在であると誇示し始めたんだ」

「神よりも偉大って……。それで神様を消滅しようって結論になったわけ?」

 発想が単純な点は、いかにもよくいるバカな王様って感じだけど。

 でもたかが人間よ?

 人間ふぜいが神様に刃向かったって、三歳児がお相撲さんに向かって、張り手をかましてるようなもんじゃないの。

 指シッペひとつで、ひっくり返されちゃうと思うんだけど。

「狂王は人々に、神を敬う一切の行為を禁止させたんだ」

 矮小な神の像など、残らず破壊せよ。

 神について書かれた書物を、全て焼き払え。

 皆が崇め称えるべきは、神より偉大な我のみである。

「その命令に従わない者は、一族全員が拷問に処された」

「ご、拷問?」

「ああ、容赦無い責め苦が与えられ、日毎夜毎、苦悶の声が人間の国に充満したんだ。それでも変わらず神を崇める者には、公開処刑が行われた」

「公……!?」

 磔にされる隣人。

 女や子どもすら、一切の慈悲も例外も無かった。

 火をつけられ、絶叫と共に燃え上がる人々の姿。

 体中を串刺しにされ、おびただしい血で染まった体を、何日間も晒される。

 濃厚な血の臭いがどこまでも漂い、やがてその身は、野生の鳥や動物に喰い散らかされていった。

「そんな……」

 背筋がゾォっと凍り付く。

 子どもすら例外無く?

 磔にされて、狂ったように泣き叫ぶ幼子の姿が目に浮かんで……。

 とても耐えられずに、頭を振って打ち払った。