銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「はぁ……はぁ……おのれ!」

 彼の強い闘志はまるで衰えていないけれど、確実に動きは鈍くなってきている。

 あたしは堪らずヴァニスに近寄ろうとしたけど、空中に浮いている身ではどうしようもなく、虚しくジタバタと空を掻くだけだ。

 ジンが何とか加勢をしようと試みて、その途端に風のコントロールが乱れた。

 ヴァニスの身体がガクンと揺れ、危うく石の槍の餌食になりかける。

 ジンもギリギリのところで踏ん張っているから、手助けできない。 どうすればいいの!?

―― ビュッ!!

「……!?」

 あたしの顔の真横でほんの一瞬、音と風と衝撃を感じた。

 目の前にパッと赤い飛沫が飛んで、こめかみに鋭い痛覚を感じる。

 石の槍の一本の切っ先が、あたしの顔をかすめ飛んだ。

「雫!?」「雫!!」

 クラリと回った視界の中で、ジンとヴァニスが目を見開いてあたしを見ている。

 集中が途切れて、揃って体のバランスを崩したふたりに向かって、石の槍が猛スピードで襲い掛かった。

 ああ! あぶな……!

 あたしは、ふたりへ向かって腕を伸ばしたけれど、悲鳴を上げる暇も無かった。

 ジンは、肩。

 ヴァニスは、脇腹。

 石柱は容赦無く、ふたりのその部分を抉り取った。