銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「ヴァニス―――!!」

 あたしは大声を出した。

 神の生贄としてモネグロスが殺された。

 精霊の生贄としてアグアさんが狙われている。

 人間の生贄は、王であるヴァニスなんだわ!

 番人はヴァニスを殺して、石柱に捧げようとしている!!

「うおおおぉぉぉ!!」

 ヴァニスの目の色が変わった。

 目に見えるほど充満する気合い。勇ましく轟く声。

 紋章の刻まれた刃が、応える様に美しく光り輝く。

 ヴァニスの身体が、素早い動きで華麗な剣舞を舞った。

 ひと太刀浴びせたかと思うと身を翻し、反す刀でまたひと太刀。

 洗練された舞のような動作で、襲い掛かる石の槍を難なく叩き切り、次々と叩き落す。

 あたしは危険な状況も一瞬忘れて、思わず見入ってしまった。

 す、凄い! いや、ヴァニスの剣の技術も確かに凄いけど、この剣自体の凄さは!?

 普通、切れないでしょ!? 剣で石は!

「王家の宝刀の切れ味と、余の磨かれた剣技、甘く見るな!!」

 ヴァニスは叫び、目にも止まらぬ技を振るい続ける。

 剣は白銀の光りとなり、襲い掛かる脅威を次々と払った。

 そういえば、ご先祖様が大昔に神様から貰ったって……。

 さすが神剣! どの神様か分からないけど、とにかくありがとう! 今すごく役に立ってます! これ!

 石の槍はいくらでも飛び出してヴァニスを襲い続けた。

 ヴァニスが残らず叩き切り、叩き落していくけれど、その数はどんどん増えていく。

 ヴァニスの息が上がってきて、肩が上下し、汗が伝い落ちている。

 無理も無いわ。ただでさえ人間離れした事をやってのけているうえ、この不安定な足場のせいで余計に体力を消耗する。