銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「番人!!」

 あたしは、腹の底から思い切り声を吐き出した。

 男のような野太い怒声を張り上げながら、あたしは心底から激情が込み上げるのを感じた。

「あたしは、あんたを拒絶する!!」

 納得などするものか! 全身全霊で拒絶する!

 あんたの成す事全てに対し、『それは違う』と断言する!

 どこまでもどこまでも絶対に絶対に拒絶して、抵抗して、そして阻止する!

 必ず!!

 いつの間にか、あたしの右の隣にジンが。

 そして左の隣にはヴァニスが立っていた。

 ヴァニスがゆっくりと剣を抜き、その切っ先を番人に向かって構える。

 それを見たジンが、お腹を手で押さえながら少し苦しそうな声を出す。

「おい狂王、そんな剣であの化け物に太刀打ちできると思ってるのか?」

「遥か昔、余の祖先が神より賜った宝刀を侮辱するのはやめてもらおう」

「あ? どこの物好きな神だよそりゃ」

「半分死にかけている怪我人のわりに、口だけは元気なようだな」

「うるせえ……」

「もはや力を使い切ったのであろう? よく頑張った。一応、褒めてつかわす」

「いちいち言う事が嫌味臭いんだよ! お前は!」

「少し休むがよい。後は余に任せよ」

「そんなわけにはいかないんだよ」

 お腹から手を離し、ジンは番人を見据える。

 その体の周囲に、静かに風が舞い始めた。

「ここで引いたら……あいつらにあわせる顔が無いんでな」

「それは、余とて同じである」

 あたしは、ジンとヴァニスを交互に見た。

 ふたり共、同じ気持ちだ。

 人間も、精霊も、そしてきっと、消えていった神達も皆同じ。

 この世界を守らなければならない! 失ってはいけない!

 道行く先の希望を信じて戦おう!

「番人! あなたの希望は叶えられる事はないわ!」

「笑止! 始祖の神復活は、もはや世界の摂理である!」

 番人が高らかに叫び、杖を激しく地面に突き立てた。

 どこか遠くから地響きが聞こえて、途端に足元がグラグラと揺れ始める。

 体の芯まで不穏な振動が伝わってきた。