銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「もういや! やめて! もうやめて―――!」

 喉を振り絞るノームの絶叫。

「イフリートおぉぉぉ―――!!」

―― ビクンッ!!

 その声に、イフリートが反応した。

 たちまち全身に力を漲らせ、雄々しく彼は立ち上がる。

 仁王立ちし、天に、番人に、そして自分自身に、彼は高らかに宣言した。

「そうだ! 我こそは火の精霊! イフリートなり!」

 目も眩む輝きに、あたしは思わず顔を顰めて手をかざす。

 青く、白く、彼の全てが閃光した。

 まるで爆発のような、逆に、誕生のような凄まじきエネルギー。

 光りが! 炎が!

 あああぁぁぁ……!!


 ……

 …………


 ……やがて……


 おもむろに輝きは消え去って、あたし達は、ゆっくりと目を開ける。

 そして、そこには……


 イフリートは、いなかった。


 目に映るのは、嘘の様に焼けつくされた大地と、何事も無かったように立つ三本の石柱。

 無表情な番人と、無慈悲なまでの静寂。

 そして……


 彼に最後の力を与え

 彼が、己の命と誇りをかけて守りきった

 愛しいノームの泣き崩れる姿だった………。