銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 ひょっとしたら……ひょっとしたら、このまま支配しきってイフリートは助かるんじゃない!?

 どえか、どうかお願い、このまま!

 胸の奥に一縷の希望が湧いた。

 ジンもヴァニスも固唾を呑んで見守っている。

 ノームは今にも気を失ってしまいそうになりながら、必死の形相で望みに縋っている。

 あたしも、呼吸をするのも忘れて懸命に祈った。

 神の消滅したこの世界で、何に祈ればいいのか分からないけれど、この際何でもいいわ! なんだってかまうもんですか!

 どうか、どうか、イフリートを助けて!

 必死に祈るあたし達の前で、イフリートの姿が、その全身の色が変わっていった。

 紅から朱に。朱から黄に。黄から白に、見る間に色が薄くなっていく。

 どんどん高温化している!?

 イフリート大丈夫!? どうか頑張って!!

 猛り狂った咆哮は、それでも止まなかった。

 自身を灼熱で輝かせながら、彼は炎を吸収し続ける。

 あたし達を守る為に。自身の誇りを守る為に。

 やがてイフリートの全身が青白く輝き始めた。

 もう温度は限界だ。でも炎はいまだに消滅しきらず、隙あらばこちらに襲い掛かってきそう。

 ついにイフリートが片膝をつき、体制を崩した。

 凄絶な表情は苦悶に歪み、全身が痙攣している。

 あたしは顔を両手で覆い、悲鳴を上げた。