銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 息もままならぬほど泣き濡れるノームを見て、あたしも涙で言葉にならない。

 どんな言葉も、もう、今は。

「我が友たちよ! 出会えて良かった! この僥倖に感謝する!」

 全員の想いを振り切るようにイフリートはその言葉を残し、炎の瀑布に向かって走り出した。

 思わずあたしは手を伸ばし、ジンもヴァニスも、身を乗り出して息を呑む。

 ノームは表情を強張らせ、全身を緊張させた。

 イフリートと瀑布の距離がどんどん狭まり、ついに、彼は瀑布の中に頭から飛び込んでいく。

「ガアアァァァァッ!!」

 火の精霊の雄叫び。

 天を仰ぎ、両手の拳を高々と突き上げ、イフリートは炎に包まれ咆哮する。

 真紅の髪を振り乱し叫ぶ姿は、まるで獅子のようだ。

「グアアァァァ――――!!」

 瀑煙が、獅子の叫びに呼応するように動き始めた。

 ゆっくりゆっくり渦巻きながら、イフリートの方へ引き寄せられる。

 まるで、さっきの火災旋風が天の炎に吸い込まれたように、イフリートが炎の滝を支配し吸収していく。

 信じられない! あれを支配してしまうなんて!

 炎の瀑布が、天の炎がどんどん消えていく!

 すさまじい勢いで炎は渦巻き、次々と吸い込まれる。

 渦の中心に陣取りながら、イフリートは激しく咆哮し続けた。

 炎の瀑布に打たれながら凛と立つその姿は、神々しいほどだ。

 なんて偉大な火の精霊なの!? あなたは!