銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 あたし達の敗北は、すなわち世界の破滅。

 それだけはなんとしても阻止しなければならない。

 じゃあ、なに? あたし達はなんなの?

「自分達が助かる為に、あんたが犠牲になるのを見てなきゃならないの!?」

 あたしは泣きながら大口を開けて怒鳴り散らした。

 頭に血がのぼってしまって、もうよく分からない。

 死に向かおうとしているイフリートを目の前にして、何をどう判断して、どれを選択するべきなのか分からない。

「使命って……使命っていったい何なのよ!?」

「我の使命は、我の誇りを守ることなり」

 自信と確信に満ちたイフリートの声に、あたしの嘆き声が止まった。

 ……誇り? 火の精霊の誇り? それは……

『威風堂々』


 逃げはせぬ。隠れもせぬ。背は向けぬ。

 正々堂々、真っ直ぐに、信じる道を突き進むのみ。

 全身全霊、心の奥までも燃え上がらせて、行くべき道を突き進む。

 たとえこの身が燃え尽きようとも。

 我は火の精霊。あれに恐れをなして逃げ隠れしたとあっては、誇りを失う。

 そんな事をしてしまっては、火の名を冠して生きては行けぬ。

 自分自身に言い訳は通用せぬ事を、我は知っているのだから。