銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 癇癪を起した子供のようにダンダンと地団駄を踏み鳴らし、そして怒鳴り散らした。

「行く事は許さない! 絶対に絶対に許さないわ!」

 真っ直ぐで、一本木で、どこまでも正直なイフリート。

 覚えてるわ。あなたの焚き火の温かさ。

 あたしを火傷させないように、いつも真剣な顔で、焚き火の傍に座り込んでくれていた。

 その色彩の美しさも、温もりも、全てはあなた自身の心のようだった。

 あの時あなたはひざまずき、あたしの手を取り懇願した。

『共に行きたい』と。

 あたしは、その手を取ったわ。

 取ったのよ。

 だから、だから……

「だから失えるはずがないじゃないの!」

 仲間が死にに行くのを黙って見ていろと!?

 好きな男が死にに行くのを、指をくわえて見ていろと!?

 ……できるわけないでしょう!? 大切な仲間なのに!!

「イフ……リート!」

 ジンの呻き声がした。

「てめ、イフリート……謝れ」

 苦痛に顔を歪め、癒しの風で自身を治癒しながら、ジンはイフリートに呼びかける。

「謝れイフリート。ちゃんとここに来て……ここで謝れ!」

 不意にイフリートの足が止まって、そしてそのまま、彼は静かに言葉を紡ぐ。

 炎の瀑布の轟きの中でも、不思議と良く通る声で。

「謝罪する。我が友であるジンよ」

「ここに来て謝れ! イフリート!」

 痛みに耐えつつ、ジンは叫び声を上げた。