銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「イフリート! 戻って来なかったら一生許さないわよ!」

「イフリート! 行くのは……行くのはかまいません!」

「え!?」

 ノ、ノームなに言ってるの!?

 かまうでしょ!? 行ったらイフリートが死んじゃうのよ!?

「かまわないから……わたしも連れていってください!」

 ノームは涙声でイフリートに訴えた。

「わたしもいっしょに行きます! いっしょに! あなたといっしょに!」

 この子は……

 バカなことを! 好きな男と心中するつもり!?

「まだこんな子どものくせして! バカ!」

「いっしょに……いっしょに……!」

 すすり泣く声が手の隙間から聞こえる。

 手の間から飛び出そうと懸命に暴れながら、ノームは泣き喚き続けた。

 一緒に、あなたと一緒に。

 その同じ言葉を、何度も何度も繰り返しながら。

 ノームを押さえ付けながらも、あたしの目に涙が盛り上がった。

 一緒になんて、無理に決まってるでしょう!?

 外に出た瞬間、あんたは燃えて消滅してしまうの!

 イフリートの元に駆け寄ることも叶わず、その手に包まれることも叶わず、死んでしまうのよ!?

 それでもいいの!? いいの!?

 そんな事も分からなくなるほど、イフリートが好きなの!?

 ノームはわぁわぁと泣き続ける。

 声が枯れるほどに泣き叫び続ける。

「いっしょに……連れていってえぇぇ!!」

 好き……

 好き、なのね……

 …………。

「ちょっと! イフリートおぉぉっ!!」

 あたしはダンッ!と地面を踏みつけ、大声で怒鳴った。

 弾みで両目から涙が一気にボロボロ零れた。

「戻って来いって何べん言わせるつもりなのっ!?」