銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

「イフリート! イフリート!」

 ノームが必死に呼びかけて、あたしも大声で叫んだ。

「なにやってんのよ! 早く来なさいったら!」

 イフリートは何も言わずに、静かに首を横に振るばかり。

 ノームの顔色が変わる。

「イフリート! なにをするつもりですか!?」

「……」

「なにするつもりなんですか!? やめて……やめてください!」

 なにをするつもりなのかと問いながら、ノームは気付いている。

 そして、あたしも気付いている。

 これからイフリートが何をしようとしているのかを。

 青ざめるあたし達の目の前で、イフリートは炎の瀑布に向き直った。

 そして、一歩踏み出す。

「「やめてっ!!」」

 あたしとノームが同時に叫んだ。

「イフリート! 行かないでください!」

「戻ってきなさい! そんな事したら死んじゃうわ!」

 イフリートはあの瀑布と対峙するつもりなんだわ!

 いくらなんでも無茶よ! いくらイフリートが炎の精霊とはいえ、あれは、あの瀑布はこの世のものではない!

 この世ならざるものに、この世のものが挑んでも、結果は目に見えている!

「だから戻ってきて! イフリート!」

 イフリートは止まらなかった。

 逆に、どんどん炎の瀑布に向かって進んでいく。

 彼は恐ろしくはないんだろうか?

 あんな、あんなものを目の前にして、しかもそれに自ら接近していくなんて。