銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

―― スッ……

 番人の、杖を持つ手が静かに上がって、あたしは背中にぞぉっと寒気が走った。

 今度は何をするつもりなの!?

 やめて! やめてよ! もう、いい加減にして!

 もう、もう……!

―― ダンッ!

 無慈悲に、杖は地面に突き立てられた。

 まるで死刑執行の合図を聞かされてしまった囚人のように、あたしは冷や汗を流して怖気ながら、待つしかない。

 これから自分達に襲い掛かる、尋常ならざる恐ろしい事態を。

―― ゴゴゴゴ……。

 ……来た。

 地鳴りのように不気味な、空間全体を震わす、この音は……。

 冷や汗が、こめかみから顎に伝った。

 とてもじゃないけど正面で確認する勇気がなくて、あたしは恐る恐る横目で状況を確認する。

 そして、あたしの両目は再び驚愕に見開かれた。

 炎の滝。

 天一面の炎の雲海が、一斉に地上に向かい、瀑布となって流れ落ちている。

 まるでイグアスの滝が炎に覆い尽くされたよう。

 もう、とてもただの炎に見えない! これはこの世のものじゃない。

 水煙を上げながら、天界から遥か地上に叩きつけられる裁きそのものだ。

 その、天の炎の裁きが……

 ジリジリとこちらに向かって近づいている!

 あたしは、無様に腰を抜かした。