銀の精霊・森の狂王・時々、邪神

 上空一面、果てまで炎の海。水のドームに揺らぐ視界でも、明確に見える。

 火。見渡す限りの空全域が、どこまでもどこまでも、炎、炎、炎。

「あ……あぁ……」

 あたしはパカリと口を開けて空を見上げる。

 恐怖とか、畏怖とか、もう、そんな感情を超えてしまった。

 あまりにも有り得ない光景に、ただただ口と両目を開くばかり。

 これ、番人がやったのよ、ね……?

 ……ば……

 バカじゃないの!? あんた!?

 なにを考えてるのよ一体!? こんな、こんな事するなんて!

 こ、こんな! こんな、こんな!

 こ……

 ここまで……まさかここまで、凄い力を持ってるなんて……。

 ノームもヴァニスも驚愕して空を見上げるばかりで、声も出ない。

 あれほど堂々と風格に満ちていた炎の龍も、まるで子供だましにみえてしまう。

 ジンは当然の事、火の精霊のイフリートまでが唖然としている。

―― ゴオォォ……

 炎の龍が、まるで引き寄せられるように空に吸い上げられていく。

 より巨大な力に同化されるようにして、全ての火災旋風が空の炎に吸収されてしまった。

 ジンとイフリートの、渾身の力を込めた攻撃だったのに。

 後はただ、熱と風の名残が虚しく残るばかり。

 あたし達は手の内をさらけ出し、あっさりと跳ね除けられてしまった。

 更に上回る強大な力をまざまざと見せ付けられ、もう、打つ手は無い。

 どうしよう! どうすればいいの!?